- 台風10号豪雨災害被災地訪問記〔7〕
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2017.06.14 Wednesday
国から激甚災害に指定されると、被災自治体には特別予算が付けられ、復興の経済的負担は減少する。
ところが、現実にその予算を執行するためには、平常時の予算執行以上に手続きは煩雑である。
加えて、国に変わって予算の分配や申請を受け付ける県などの上部機関でも、未経験な事業であったり、未熟な職員が実施にあたることになる。
一つの予算申請に対し、その申請の受け付けさえ速やかに実施されず、受け付け後も、審査や会議や見当会議やと、行政の煩雑なシステムの中でたらい回しにさらされてしまう。
粗っぽい言い方であるが、緊急対応の筈の激甚災害予算による復旧工事は、中々本格化されないのが被災地の常なのである。
統計では900人が孤立状態となり、死者は9人だったとされているが、この統計は岩泉中心地から離れた山間部集落の孤立人数をカウントしたものであって、現実には中心街さえも、盛岡や宮古市、久慈市と言った主要都市から隔絶されていたのである。現実を過小評価することで災害規模を歪曲し、復興予算を削減しようとする政府行政の手法がないとは言えないのだ。
訪問してわかる、復興の歩みの遅さにイラつきを覚えた。
その遅れが、被災者のみならず岩泉全体の復興テンションを下げてしまう。再興目処の立たない被災者の中から、生き甲斐さえ萎えさせてしまうのである。
こうした問題は社会福祉部所やボランティア活動だけでは解決できるものではない。
いや、むしろ復興の遅れなどが生み出す沈滞ムードこそが福祉事業やボランティア活動の成果を無力にしてしまう危険さえあるのだ。
「災害関連死」なんと、いやな言葉だろう。被災者が仮設住宅に入居したと言うことは、家屋をなくした人が安全な生活を取り戻したと言うことではない。
災害後の孤独死や心的外傷の発症は、圧倒的に仮設住宅で発生しているのが現実である。
復興のあゆみの遅さが気になる岩泉の印象であった。期間中は、知り合いの家にお世話になり、一泊だけ、田野畑村にあるホテル「羅賀荘」に宿泊した。
この地を知って10年になる我々も、「羅賀荘」に宿泊するのは、初めてのことである。
短期滞在とはいえ、あいさつ周りなどでスケジュールが詰め詰めだったので、疲労の蓄積を避けたかった。
最後の夜には、タオル配付で活躍してもらった、ブルーシートの田野畑メンバーに岩泉メンバーも加わって慰安会兼活動反省会を開催した。結果、岩泉メンバーが口にした「ブルーシートって、慈悲深いですが、思慮深くはないですよね!」の名言が反省会の総括となってしまった(笑)
そして、誰もその言葉を思慮深く反省することもなく眠りについたのである。つづく
代表 角田四郎